
若い人に勧められて、読んでみた。今の若い人の気持ちが少しでも理解できたらいいな、と思った。
春彦も公隆も、優しい男性。というよりも、登場人物が基本的にみんな優しく感じる。私自身が昭和世代だからなのだろうか。これは、平成生まれの人たちの特徴なのだろうか。薫子は自分のことを「昭和の女」だと言う。それは「圧しつけがましい、あつくるしい」ということを意味しているのだろうか。
小野寺せつながとても魅力的に感じる。彼女は平成生まれの人のように思えるけれど、むしろ私の知っている大正か明治生まれの人の姿に見える。
全体に流れている雰囲気は、「子どもは生まれて来たからといって、決して、親に愛されるわけでもなく、幸せになるわけでもない」という感じ。それは、暗に「親の身勝手な欲望か、単なる快楽を求めた」結果の産物でしたかないと、言っているようにも感じる。
親が子どもをもうけて、可愛いとか、いい子とか言えれば、子どもは親に対して、十分過ぎる役目を全うしたことになる。
せつなが鈴夏の言葉に対して言った言葉がある。
「でもその子の言うとおり、温暖化は進みこそすれ回復することなんてないだろうし、日本は世界屈指の財政難国だし、電気代も物価も上がりっぱなしだし、消費税もいずれまた上がるし、少子高齢化は加速度的に進んでいくだろうし、かなり未来って暗いんじやないですか。小学五年生にしてちゃんとわかってるって立派ですよ。彼女たちは、私たちよりもしんどい世の中で生きていかなきゃいけない。隠したってしょうがないです。それが事実ですから」
これが、今の若い人たちの思いのような気がした。そんな世の中を作ったのは、彼らの親たち以前の者たちで、この苦しい時代は、その人たちの責任ではないかと、文句を言われているように思う。
戦後生まれの私たちが、今の日本の悲惨な現状は、戦争をした世代の責任だと、文句を言ったように。
そうして、ようやく手に入れた「優しさ(或いは『平和』)」という真綿にくるまれて、自由と自己を奪われているのかも知れない。
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