源氏物語冒頭

 いずれの御時にか。女御・更衣、あまたさぶらひ給ひけるなかに、いと、やむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふ、ありけり。(岩波文庫)

 日本の文学は、冒頭の部分がとても素敵なものが多い。特に古典はそうなのかも知れないけれど、どれも印象深いものが多い。その中でも、源氏物語のこの冒頭部分は本当に素敵な気がする。
 「いずれの御時にか。」
 これでもう、読者の心は鷲掴みだろう。この冒頭のことばだけで、源氏物語だとわかる。
 「どの方のご治世の時でございましたか。」「いつの御時代のことだったか。」「いずれのお方の時代でありましたでしょうか。」「どなたさまの御世であったか。」「どの時代の話だったでしょう。」・・・。色々考えても、私の足らない頭では、「いずれの御時にか。」に当てはまる言葉は他には存在しないように思う。
 「いと、やむごとなき際にはあらぬが」とは、はてさて。最上級のその上の否定。『際』とはなんなんでしょう。『際』ではないけれど言いながら、『際』ですよねぇ~。絶対!って感じかなぁ。『やむごとなき』も「やむことがない」➡「どこまでも続く続く続く…」(線路は続くよ、どこまでも…)の『際』。
 そして、「すぐれて時めき給ふ」。なんなんでしょうか。『時めき』という言葉が素敵ですよね。胸が「キュンキュン」しませんか。「やむごとなき際にはあらぬ」と言っておきながらの「すぐれて」、「いずれの御時」と言っておきながらの「時めき」。
 仏教的には、泥の中から生え出でた『蓮の花』的な、ということなのでしょうか。
 キリスト教的には、暗黒時代に咲いた「マリア様」のような、ということでしょうか。そうなると、そうなると…。これ以上は言えませんね。多方面から苦情が来そうで。でも、いつか言ってしまいそうです。

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