戦場のピアニスト

 NHK BSプレミアムで「戦場のピアニスト」をやっていたのを録画したものを見た。
 ポーランドに住んでいたユダヤ人がゲットーに隔離されたり、アウシュビッツに移送されて、惨殺されたのだろうか。
 逃げ延びた主人公のシュピルマンは、何とか生き残ることになるが、終戦の数週間前にドイツに侵攻されて、彼の隠れ家は占拠されてしまう。そこで、隠れていることがバレるが、彼を見つけたドイツ兵はシュピルマンをそのまま隠して、食料などを与える。それから間もなくして、ドイツに退去命令が出て、ドイツは敗退し、ポーランドは解放され、そのドイツ兵将校は捕虜となる。
 ユダヤ人というだけで、酷い差別を受け、アウシュビッツではホロコーストでたくさんのユダヤ人を無残な死に追いやった。
 ドイツという国の恐ろしさを痛感させられる事実である。その後ろにナチスドイツがあり、その後ろにキリスト教がある。ドイツと言えば、マルチン・ルターの出た国で、プロテスタントの宗主国と言えるだろう。
 ドイツは今移民が半分以上いると聞く。ドイツ人の数よりも多いと。ドイツは少子化が進み、どんどん人口が減って行っていた。有数の工業立国であって、EUのリーダー的存在でありながら、未来に希望が薄い国のように見える。その理由はやはり「ナチスドイツのホロコースト」だろう。こうした歴史と先祖をもって、多少の理性と良心があれば、誇りある国民としての未来を希求することは難しい。子どもにその重荷を背負わせることを思えば、子どもを生むことを控えたくなるだろう。そして、彼らの精神を破壊しているのは、「ネオナチ」のような、ナチスを正当化し、戦争犯罪を認めようとしない者たちのせいだろう。

 日本はどうなのかと考えなければならない。第二次世界大戦時、日本はこのドイツと同盟国であり、ドイツよりも長く戦争を続けた。日本が韓国、中国、東南アジアでして来たことは、ナチスドイツの陰に隠れているのかも知れないけれど、その事実からは逃れられない。開戦自体の自作自演や、南京大虐殺は嘘だと言うが、事実だと中国では考えられている。七三一部隊などの生物化学兵器の開発や人体実験、そもそも大東亜共栄圏を作ろうとした大日本帝国のあり方そのものが、韓国、中国、東南アジアを植民地化し、支配下に置こうとしたのは事実である。
 その結果、全国に空襲を受け、二度の原爆を落とされ、ようやく敗戦を受け入れた。

 私は戦後生まれで、当然戦争などしたことはない。しかし、第二次世界大戦の加害国としての責任を負わされ、敗戦国としての非難を浴び続けて来たと思う。ナチスドイツの陰に隠れ、アメリカの支配下に入ることで、戦争犯罪国としての責任を逃れ、知らん顔して、無罪であるかのように生きて来た。
 しかし、それでは罪と罰と責任を先送りにしただけで、逆にいつまでも問い続けられる。先祖がこの大戦を始めたことも、負けたことも、戦後にきちんとケジメをつけなかったことも、未だに私たち日本国民を苦しめ続けている。
 歴史の教科書から消し、なかったことにしようとしても、なくなるわけがない。それらは、姑息で卑怯なことでしかない。日本人の美徳である武士道とも潔さとも大和魂ともかけ離れた行為であり、精神性だろう。
 戦後、どんなに立派なことを標ぼうしようとも、それが嘘偽りでしかないことを知る。その上で起こる様々な、政治や企業や芸能界の不祥事が、日本人の美徳や高潔な精神性を蝕んでいく。
 故元安倍総理が「70年談話」で話した「次世代にこの重荷を背負わせない」というのは、殺人者が被害者家族に期待する、単なる気休め程度の響きしかない。村山談話よりも「後退した」と言われる程度の謝罪で赦されるとは思えない。

 「『大日本帝国はナチスドイツと同じだった』のだという認識」から、始めなければ、たぶんこれから先の日本の明るい未来は見えて来ないと思う。よく政治家の人などが言う「隗より始めよ」という言葉を使っているが、一番最初の隗は、この認識だろう。

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