汚名返上、名誉挽回

 私はここに何度も書いたけれど、戦後生まれの私は、第二次世界大戦に参加したこともなければ、進軍したこともないし、中国大陸へ行って、中国人を殺したこともないし、朝鮮人を虐げたこともない。しかし、生まれてから学校へ行くようになる前から、「酷いことをした日本人」という括りの中で、生き続けて来た。勿論、学校教育の場ではずうっとそのことをとても強く教えられて、戦前の日本がいかに悪い国であったかを習い続けた。
 卑怯な自作自演で、中国軍が攻めてきたとウソをついて戦争をはじめたし、パールハーバーでは、宣戦布告前に開戦し、ここでも卑怯な方法で不意打ちをくらわした。占領した地域では、神社建て、天皇を拝ませ、神国日本を教え込み、地元民を奴隷のごとく扱い、軍人による婦女暴行が横行したと習った。そして、戦争末期では、本当に非人道的な「細菌兵器」や「毒ガス兵器」を使用し、最悪の「特攻隊」を組織し、若い命を無駄に散らしたのだと悔しそうに言っていた。
 大本営発表はウソばかりで、敗戦の色が濃くなった中でも、「勝った!、勝った!」と言い続けた。天皇は、戦後の自分の立場をどうやって守るかというみとに躍起になって、ポツダム宣言の受諾を先延ばしにしたために、広島、長崎への原爆投下を許した。もっと早く、敗戦を受け入れておけば、あの二度の被爆はなかったと習った。
 戦前は、「真影」を学校の倉庫に安置し、学校長が白手袋で恭しく取り出して、「見ると目がつぶれる」と教え込み、「現人神」だと喧伝した。それが、いきなり何を言っているかわからない口調で、意味不明な「玉音放送」を流し、「戦争が終わった?」らしいと伝え、神だとうそぶいていたのが「人間宣言」をし、マッカーサーの横で知らん顔をして、戦後アメリカのポチに成り下がり、未だに日本の立場は半分植民地状態であると、戦争を経験し、敗戦に泣いた世代は言っていた。
 人非人であり、卑怯者であり、狂気であり、絶対的な悪人であり、敗者であり、ナチスドイツとなにも変わらない、最低の国家が、戦後の日本だと教えられた。
 日本人としての名誉も誇りも何一つ存在しないような状態だった。それが、私の中にある「昭和」である。

 それの「汚名を返上」し、「名誉を挽回」する方法は、もう一度戦争をして勝つということしかないだろうと、子ども心に思っていた。しかし、それは絶対にしてはならないことだ。
 でも、高市首相の発言を聞くと、それを狙っているのかと思う。中国を煽り、中国に手を出させ、中国を叩く。特に勝つ必要はない。引き分けるか、現状維持をすれば、日本はその不名誉な状態から、立て直すことができる。或いは、本土に核兵器を撃ち込まれたとしても、世界世論が日本の味方をしてくれれば、日本はもう中国に頭を下げる必要はない。今のみじめな状態を取り除き、中国を非難することができる。中国に日本を撃たせることが、何よりも必要なことのように見える。
 そんな「狙い」なのかなと、感じる。

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