
学部生の頃にカラオケに行ったことはなかったと思う。それが、大学院に入ってから様子が変わった。学部の時は「美術研究室」の子たちとのやりとりばかりで、他学科との人間関係はほぼ無かった。
心理学研究室に目をつけられて実験体にされるくらいだった。
それが、大学院に入ると不思議なくらいに他学科の研究室の人たちとの交流があった。心理学、音楽、国語、社会…。どの学科も一人か二人くらいしかいなかったのか、あるいは交流会に出て来なかっただけか。それでも他学科の子たちとの交流会は楽しかった。学科が違うとこんなにも違う者なのかと思ったこともあった。
ただ、飲み会の度にカラオケに連れていかれていたのか、どのお店にもカラオケセットがあったのか、とにかくカラオケをする機会が増えた。最初は拒否していたが、どうしてもという流れになって、マイクを持たされた。しかし、歌うのは恥ずかしくてとてもイヤだったし、躊躇われた。
しかし、お酒というのは「恥ずかしい」という感情を薄めてくれるようで、その頃に流行っていた「酒と泪と男と女」という歌を歌ったように思う。この歌は失恋をして酔っぱらって歌うのには丁度よいものだったので、カラオケを勧められるとこの歌を歌っていた。
しかし、ずるいもので、みんな歌が上手い。心理学のヤツは永ちゃんの歌を社会のヤツは軽いフォークソングを国語の子も上手いものだった。その中でも音楽の子は絶大に上手い。ずる過ぎる。
一度、音楽の教授しかも声楽科の教授が参加したことがあった。化け物のように上手い。あまりにも上手いのでせがんだら、その時ネクタイピンをもらったような気がする。それにしても声楽の教授もカラオケで歌うのだと思って驚いた気がする。
何で、みんなこんなに歌が上手いのだろうか。
ただただ恥ずかしいし、惨めだった。歌なんて、酔っぱらっていなければとてもじゃないけれど歌えるものじゃないと思った。
それで、教会に行くようになった時に、みんなで賛美をするのが、本当に恥ずかしくて、悲しくて、辛かった。どうして誰もが、素面で歌が歌えるのだろうかと疑問に感じた。


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