
今年の子どもの名前ランキングで、女の子の名前に使われた漢字のトップが、『翠』だったらしい。
この字を見て、大学生の時のことを想い出した。漆芸を専門にすることにして作った卒業制作の作品の中に、アワビ貝を貼った水差しを作った。乾漆で胎を作り、仕上げにアワビ貝を貼った。その作品に付けた名前がこの字だった。
2mm×5mm角くらいの大きさに切ったものを15cm×20cmの面、四面にびっしりと貼った。毎日毎日何時間もかけて、一月以上かかったと思う。漆芸の作業としては、大したことではないようだが、初めてする作業に大変だったことを想い出した。
女の子の名前の『翠』は「すい」と読むらしいが、私の漆器の名前の『翠』は「みどり」と読ませた。恩師の太田先生と二人であれこれと候補をあげて、命名したことを想い出す。
誰かと一緒に名前を付けるというのも、自分の子どもに夫婦で考えて付けるのと似ている。
名前を付けることによって、自分のものであることを確認するのかも知れない。でも、同時に「世に送り出す」ために必要なのかも知れない。
アダムは、エデンの園にいる動物たちに名前を付けたと聖書にあるが、名前を付けることで、「認識」したのだと思う。
「雑草という名前の草はない」というが、それはひとつひとつの草を認識していないことを意味しているのだろう。
国民、群衆、敵、味方、日本人、中国人、韓国人、外人、被害者、加害者…等々。そんな名前の人もいないのだと思う。一人一人に会って、名前を呼び合うようになった時に、相手を認識できるのだろう。
子どもに名前を付けるというのは、うれしく、ありがたく、大切なことだと思う。家族の愛情をいっぱい注いで、名前を付けてほしい。幸せでいてほしい。


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