人間国宝太田儔先生

「バッタのひげがもう彫れないんだ。」と、晩年電話で話した時に言っていた。何十年もかけて磨き上げた技が年を取ることでできなくなっていく。藍胎蒟醤は、仕上げた作品の上に「蒟醤の剣」で彫って色漆を埋める。一発勝負の真剣そのもの。その彫りに誇りを持っておられた。とても美しく魅力的な線を彫られる。年を取ると目が見えなくなり、手も震え、思うように動かなくなる。とても残酷なことだ。「今度、字の彫り方を教えてほしい。」と言うと、「早く来ないと死ぬぞ。」と、笑いながら言われて、教えてもらう前に本当に逝ってしまった。
人間国宝になった時のお披露目会に呼んで頂いたので、まずおうちを訪ねたら、「この子はぼくの変わり者の弟子で、牧師をしているんだ。」と、初めて会った、きっととても偉い方たちに紹介してくれた。フリーレンではないけれど、短い時間しか一緒にいなくても、人生を変えるような出会いがあることを教えて頂いた。また、会いたい。

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